ドライアイについて
本来目の表面には常に少量の涙が分泌され続けていて、角膜(クロメ)と結膜(シロメ)を潤しています。ドライアイとは、涙の分泌量が減ったり、量は十分でも涙の質が低下することによって、目の表面を潤す力が低下してしまう疾患です。
現在、日本では約2,000万人ものドライアイの患者さんがいるといわれ、オフィスワーカーにおいては3人に1人がドライアイという報告もあり年々増加傾向にあります。
ドライアイの原因として、年齢とともに涙液分泌が減少する事や女性に多い事が解っています。乾きの症状が多いのですが、その他に異物感や痛み、充血やかすみ、疲れといった多種多様な症状を訴える方も多くみられます。
治療の前にドライアイを軽減する環境づくりも重要です。
長時間のパソコン作業や車の運転は、瞬きの回数が減るのでドライアイ症状を悪化させます。コンタクトレンズも種類によってはドライアイを悪化させるので、注意が必要です。
加湿器を用いたり、エアコンの設定を変える、空調が顔に当たらないようにするなどもとても有効です。市販のドライアイ専用眼鏡の使用や眼鏡の周りに覆いを付けることも目の周りの湿度を上げるのに有効です。また、目を温めると血流が上がり、涙液分泌が良くなるといわれています。
治療としては足りない涙を目薬で補う方法が主流です。ドライアイの症状を緩和する事が目的で、完全に根治できる訳ではありません。ドライアイ治療薬は何種類もありますが、それぞれにちょっとした特徴がありますので、代表的な点眼薬について述べたいと思います。
ヒアルロン酸製剤
最も多く使用されているドライアイ治療薬です。乾き過ぎると目の表面が荒れて細かい傷が生じますが、この傷を修復する作用があります。副作用が全くと言って良いくらいありませんので、妊婦さんやお子さまにも安心して処方でき、当院でもまず最初に処方する事が多いです。ただ眼表面には20分程度しか滞留せず、根本的に涙液量を増やす効果はありません。乾燥を防ぐために独特のベトつき感があり、アレルギーの原因となる空気中の浮遊物がくっつきやすくなります。アレルギー性結膜炎の時期の使用は要注意です。
人工涙液
涙と同じ濃度の塩分を含んだ点眼薬です。防腐剤の入っていない物が薬局やドラッグストアで買えますので病院へ行かなくても買えるのが最大のメリットです。有効成分は入っていませんし、すぐ流出してしまうので治療効果はあまりありません。頻回に点眼し過ぎると涙液中の有効成分まで流してしまうので、注意が必要です。このタイプの点眼薬はむしろアレルギーの方が洗眼薬として使用するのがオススメです。
ジクアス®
点眼する事で水分量を増やす効果と乾きを防ぐ為のムチンという物質を増やす効果があります。ムチンには水と油を馴染ませる事で油膜を安定化させ、乾燥を防ぐ効果があります。点眼すると2~3時間効果が持続するため、中等度以上のドライアイの方にはオススメの点眼薬になります。防腐剤もソフトコンタクトレンズに吸着し難い物を使用しているため、コンタクトレンズを装用したまま点眼する事ができます。
あまり副作用もありませんが、難点は最初のうちは少々しみる方がいるのと、メヤニが多くなる方がいます。しみるのはドライアイにより角膜表面が傷ついているせいなので、1週間程度で収まる事がほとんどですから、まずは1週間頑張って点眼するよう、お願いしています。
メヤニが多くなったように感じるのは涙液中のムチンが増えたためで、点眼の効果がちゃんと現れているからになります。気になる場合は医師と相談して点眼回数を減らすこともあります。
ムコスタ®
この点眼もムチンの産生を促進します。元々胃潰瘍を治療する為の内服薬だったものを点眼薬にしているため、粘膜の炎症を抑える効果もあります。このため、炎症を伴うタイプのドライアイには著効する事が多いです。
防腐剤フリーのため、コンタクトレンズ装用中でも点眼できます。副作用として苦味があります。これは点眼した液が喉の方まで流れていく事で生じます。すぐ慣れる方も多いですがどうしても慣れずに点眼できなくなる方もいます。点眼後にコーヒーを飲む事で苦味が楽になるそうなので、お試しください。また、白く濁った点眼液なので、点眼後しばらくカスミがでたり、マツゲに付着して白っぽくなるのを嫌う方もみられます。
これらの点眼治療で良くならない、忙しくて何回も点眼できない場合は、自分の涙を貯める処置を行います。
コラーゲンゲル
熱を加えると固まるコラーゲンを涙点から涙嚢とよばれる涙の貯留槽に流し込み、40℃くらいで温めて固めて涙の流出を防ぎます。処置には痛みも違和感もほとんどありません。コラーゲンは3ヶ月程度で無くなってしまうため、冬場の乾燥のひどい時だけで良い方や、次に紹介するプラグのお試しとしてされる方もおおいです。
涙点プラグ
涙の排水口である涙点に栓(涙点プラグ)をして、涙が流出しないようにする方法です。コラーゲンのように溶けて無くなったりはしませんので長期間の効果が期待できますが、こすったりすると脱落してしまうので注意が必要です。
涙点は上下にありますが通常どちらか1つにプラグを入れて様子をみます。上下ともにプラグを入れるとドライアイはかなり改善しますが、今度は流涙(いつも涙があふれてこぼれる症状)に悩まされる事が多いためです。まれですがプラグに対してアレルギーを生じ、除去する場合もあります。
涙点閉鎖術
プラグでもドライアイが改善しない場合に、排水口である涙点を手術的に閉鎖する方法です。