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高齢者に多い慢性結膜炎について

結膜は角膜(クロメ)以外の眼球のシロメの表面とマブタの裏とを覆っている半透明の粘膜です。ここに炎症がおこる病気をすべてまとめて結膜炎とよんでいます。よく『結膜炎』=『すべて他人に感染する』と勘違いされている方が多いですが、感染するのはごく一部の結膜炎で、原因の区別なく結膜が充血したりメヤニが増えたりするものはすべて結膜炎とよばれています。

結膜炎には大きく分けて、急性結膜炎と慢性結膜炎があります。急性結膜炎としては感染性結膜炎が多く、慢性結膜炎としてはアレルギー性結膜炎が多くみられます。

慢性結膜炎の原因として最も多いのは通年性のアレルギー性結膜炎です。ですが高齢者の中には、アレルギーは無いにもかかわらず、いつも異物感や充血が気になったり、涙がこぼれやすくなったりする症状を訴えて来院される方が非常に多く見受けられます。

ここでは高齢者の慢性結膜炎の原因として多い結膜弛緩症という疾患について書きたいと思います。

 

結膜弛緩症

目の表面には常に涙が分泌されて乾燥を防いでいます。分泌された涙は鼻の付け根近くにある涙点という排水口から鼻の奥に流れていくことで目からこぼれないようになっています。結膜弛緩症は結膜がたるんでしまう事によって様々な症状を引き起こす病気です。

たるみの原因ははっきり解っていませんが、基本的には顔のシワが増えるのと同じ老化現象で、加齢とともに頻度が増えていきます。本来眼球の壁に密着していた結膜がゆるんでダブついた状態になるため、異物感の原因になったり、常時こすれる事による充血やメヤニの増加、涙の排水経路を邪魔するためにいつも涙目になる、といった症状が出ます。

軽症のうちは抗アレルギー点眼薬や非ステロイド性抗炎症点眼薬で様子を見ます。メヤニや充血が嫌だ!とのことで強い抗生剤やステロイド剤を希望される方も多いですが長期に使用するのはおすすめできません。抗生剤に関しては細菌感染症でなければ全く効果がありませんので、そもそも結膜弛緩症には効果がありません。

さらに抗生剤を漫然と使用すると、抗生剤の効かない耐性菌が徐々に増殖してきます。この耐性菌は鼻腔の奥に繁殖し、これが高齢者に多い誤嚥性肺炎を引き起こした場合、抗生剤が効きにくいので生命に係わる問題となるからです。

ステロイド剤に関しては症状を和らげる効果もありますので短期的に使用する事もありますが、長期にわたって使用すると眼圧が上昇して緑内障を生じたり、白内障が早く進んだり、感染症を引き起こしやすくなるといった副作用もありますので、こちらも長期連用は避けた方が無難です。

当院では抗生剤とステロイド剤は原則として必要最小限しか処方いたしませんし、長期に続ける場合は必ず医師の診察を受けることを前提としています。点眼治療を続けても、ゆるんでしまった結膜が元に戻る訳ではありませんので、根本的な治療としては余っている結膜を焼灼したり、切除したりといった手術が必要となります。

手術というと大げさに思われるかもしれませんが、痛みもほとんどなく、15分程度の簡単な日帰り手術になりますので、お困りの場合はぜひご相談ください。

 

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