霰粒腫と麦粒腫(ものもらい)について
急にマブタが腫れた、痛みもあるし、みっともないから早く治して欲しい、といった訴えで来院される方のほとんどが『ものもらいができた』と言われます。ところがものもらいと自己診断されている方のほとんどが霰粒腫とよばれるものもらい(麦粒腫)とは似て非なる疾患であることをご存知でしょうか?
こちらでは霰粒腫と麦粒腫について書きたいと思います。
霰粒腫
マブタの中には瞼板とよばれる支持組織があります。瞼板の中には油分を分泌するマイボーム腺とよばれる分泌腺があります。霰粒腫はこの分泌腺が途中で詰まってしまって、中に分泌物が溜まってしまう疾患です。ちょうど顔にできるニキビと同じようなものだと考えてもらえば解りやすいかと思います。中につまっているのは自分の分泌物なのであまり痛みがないのもニキビと同じです。出口がないため、徐々に大きくなってきたり、マブタの中にしこりが触れる事で気がつく方が多いです。
かなり目立つ大きさになると『早く治してくれ』とよく頼まれますが、なかなか難しいです。というのも瞼板はかなり固い支持組織であるため、破れて中身が出るのに時間がかなりかかるためです。針などで穿刺しても内容物がドロッとした半固形物なため、ほとんど排出できませんし、化膿している部分がない場合は抗生剤も効果ありません。
最も早い治療法は手術的に切開して中身を取り出すことになりますが、炎症の強い内は内容物に対して大きく切開せざるを得ないため、傷跡も大きくなってしまいます。
早く治したい気持ちは良くわかりますが、まずは炎症を抑えるためにステロイドの眼軟膏をこまめにマブタの上から塗ったり、抗炎症剤や抗生剤を内服して消炎をうながします。
点眼薬はマブタの中にはあまり効き目が無い場合が多いので基本的には眼軟膏を使用します。自然と吸収されて治っていく場合も多いですが、かなり時間がかかります(半年以上かかる場合もあります)。
どうしても治りが遅い、早く治したい場合は摘出手術を要しますので、ご相談ください。15分程度の日帰り手術で、約1週間後に抜糸が必要になります。
麦粒腫(ものもらい)
マブタの中の分泌腺に細菌が感染し、化膿して炎症を起こして腫れる疾患で、本来昔の人はこの麦粒腫をものもらいとよんでいました。現代社会はやはり清潔な環境になったためか、霰粒腫よりもかなり見かける頻度は少ないと思います。霰粒腫と違って痛みを伴うことが多いですが、腫脹の中身はしこりではなく膿なので、針で穿刺して排膿してやることで速やかに治っていきます。抗生剤点眼も良く効きますので1週間程度点眼して治癒します。