感染性結膜炎について
結膜は角膜(クロメ)以外の眼球のシロメの表面とマブタの裏とを覆っている半透明の粘膜です。ここに炎症がおこる病気をすべてまとめて結膜炎とよんでいます。よく『結膜炎』=『すべて他人に感染する』と勘違いされている方が多いですが、感染するのはごく一部の結膜炎で、原因の区別なく結膜が充血したりメヤニが増えたりするものはすべて結膜炎とよばれています。
結膜炎には大きく分けて、急性結膜炎と慢性結膜炎があります。急性結膜炎としては感染性結膜炎が多く、慢性結膜炎としてはアレルギー性結膜炎が多くみられます。
感染性結膜炎には、細菌性とウイルス性の結膜炎があります。細菌性結膜炎は主にマツゲの根元などで細菌が繁殖することで、メヤニや充血を引き起こします。
この細菌を減らすために抗生剤(点眼・軟膏・まれに内服)を使用します。まれに細菌が産生する毒素に対してアレルギーを生じ重症化することもあり、その場合はステロイド点眼を併用します。
ウイルス性結膜炎は、ほとんどがアデノウイルスの感染によるもので、このウイルスはかなり強い感染力(家具などに付着した状態で約10日間は感染力を維持できる)を持っています。このウイルスによる結膜炎を流行性角結膜炎(はやりめ)とよびます。
急激に強い充血や多量のメヤニが出ることが多く、片方の目からはじまることがほとんどです。眼の症状のある方の耳の前にしこりが触れたり押すと痛みのある場合(耳前リンパ節腫脹)はかなりの確率で流行性角結膜炎が疑われます。最近はアデノウイルス検出キットの精度もかなり高くなっており、陽性反応が出れば100%流行性角結膜炎という診断になります。
流行性角結膜炎は学校伝染病に指定されており、医師が認めるまで学校へは登校できません。過去には病院内で大流行し、病棟閉鎖を何度も引き起こしたこともあるため、医療関係者も原則休むべきです。一般の職場内で集団感染を生じたり取引先に感染拡大を生じて迷惑をかけることもありますので、できるだけ仕事は休む方が望ましいです。
残念ながらアデノウイルスに効く薬は現在のところありません。身体の中にこのウイルスを退治する抗体とよばれる物質を増やして徐々にウイルスをやっつけていくことで治癒していきます。そのため人によって治るスピードが変わることが多く、完治には最低1週間から2週間かかります。
忙しく仕事をし続ける人ほど治りは遅くなりますし、美味しいものを食べて、ゆっくり休養することが一番の治癒への近道になります。
症状を和らげるために非ステロイド点眼薬や低濃度ステロイド点眼薬を使用します。ウイルスにより抵抗力が落ちているため、他の細菌感染を防ぐ目的で抗生剤点眼も使用します。
症状が落ち着いた後に、角膜に点状の濁りが出現する場合があり、混濁が強くなると視力が低下してしまいます。これを抑えるために半年間くらいステロイド点眼を使用した方が良い場合もありますので、もう治ったかな?と思っても念のために再診するようにしてください。